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ホーム > 大村智先生2015年ノーベル賞にびっくり。イベルメクチンとは!

2015年10月5日のNEWS ZEROを何気なく見ていて、”日本人がノーベル医学・生理学賞受賞、すごいなぁ”と思ってそのまま見ていました。大村先生が受賞の知らせを電話で聞いた時の会話の録音がそのまま放送されるというので、何の功績で受賞されたのか興味をもっていました。”アイバメクチン(ivermectin)を生む微生物をゴルフ場で発見・・・”それを聞いた瞬間、正直おったまげました。今確かにivermectinと言ったよな!と自問自答しました。ivermectinは英語ではアイバメクチンと発音され、日本語ではイベルメクチンと言う薬剤名なのです。

この薬剤は動物病院の獣医師であれば知らない先生はいないと思います。いろんな使い方をしますが、よく使うのは、フィラリア症の予防薬です。ワンちゃんを買っている飼い主さんであれば、お薬の商品名としてカルドメック、アザバスカ、パナメクチンなどが、イベルメクチンを成分とするお薬なのです。そのイベルメクチンを開発したのが、日本人の先生だったとは!当動物病院ではいくつかあるフィラリア予防薬の中で、このイベルメクチンを処方しています。後に述べますが、ちゃんとした理由があるからです。コリー犬やシェルティーでは注意がいるお薬ですが、フィラリア症の予防に使う用量では問題はないのです。


実はこのイベルメクチンには個人的に思い入れがあります。それは、欧米では以前から普及している使用方法が日本の動物病院では十分に普及していなかったからです。現在どの程度普及しているのかは私にもわかりません。もちろん、フィラリア予防薬としてはイベルメクチンは以前から普及しています。問題は、フィラリアに感染してしまっているイヌに対しての話です。

欧米では感染してしまっているイヌにフィラリア予防薬を処方する場合、このイベルメクチンを選択するのが標準的と思われます。しかし、日本ではそうではなかったのです。日本ではどういうわけか他のお薬のみが使われていたのです。経験的には昨年もフィラリアに感染しているワンちゃんの転院を受けましたが、やはりイベルメクチンは処方されていませんでした。そういうことは今まで何回もありました。日本では、感染犬には他のある薬剤の方が安全と思われていて、そのお薬のみを処方することが標準的と思われていました。もちろん、たまたま、宮崎市内にある他の動物病院から私の動物病院に転院してくるフィラリアが感染しているワンちゃんが、イベルメクチンを処方されていないだけなのかもしれません。

ではなぜ、フィラリアに感染したイヌに欧米ではフィラリア予防薬として、イベルメクチンを処方するのしょうか。もちろん、感染しているイヌにフィラリア予防薬を処方する場合注意が必要です。欧米では、イベルメクチンは感染しているイヌに処方しても副作用が起きにくいと言われています。とは言っても、私は副作用を起きにくくする薬剤と一緒に処方します。

イベルメクチンを感染犬に処方する理由は、イベルメクチンが心臓の中にいるフィラリア(親虫)にも効果がある予防薬なのです。フィラリア症を予防する予防薬の役割は、蚊に刺されてフィラリアの子虫(心臓に住むフィラリアの成虫が産んだ子虫)を移されたイヌの体内で、フィラリアの幼虫が大きくなって心臓に寄生する前に駆虫することです。ですので、フィラリア予防薬の本来の目的は、心臓に寄生する親虫を駆虫することではないのです。

以前はこのイベルメクチンでは心臓に寄生しているフィラリア(親虫)を駆除するのに2年程度かかりました。毎月1回投与して、24ヶ月程度かかりました。今は抗生剤と一緒に使うことで、9か月程度で駆虫できる可能性が十分あります。ですので、フィラリアに感染していることを早期発見した場合はイベルメクチンで安全に駆虫することができるのです。例えば、他のフィラリア予防薬を感染犬に毎月1回処方して9ヶ月経っても、心臓にフィラリアの寄生虫は生きていて悪いことをしますが、イベルメクチンと他の薬剤を使って処方すると、9か月経ったころには心臓のフィラリアはいなくなっていることになります。この差は命に関わります。費用的にも心臓に寄生しているフィラリア成虫を駆虫する注射や、手術で摘出する方法に比べてかなりお安いです。


昨年他の動物病院でイベルメクチンではないフィラリア予防薬のみを投与されていたワンちゃんは16歳という高齢で、心臓病の持病もあり、しかも気管にも問題がありました。色々な方法を飼い主さんに伝えましたが、結局リスクの少ない方法として、イベルメクチンを使用し、9か月で駆虫することになりました。この子の場合、2年前にフィラリアに感染していると他の動物病院で診断され、日本ではフィラリアに感染している場合によく処方されていたフィラリア予防薬を2年間投与されていました。もし、イベルメクチンと抗生剤を2年前から処方されていたら、すでにフィラリアは心臓からいなくなっていたわけです。それでも、9か月間何とか無事に過ごし、フィラリアを心臓から駆除することに成功しました。

心臓に寄生してしまったフィラリアの駆虫方法としては、注射薬の砒素剤があります。この薬剤が欧米では標準的な治療薬だと思います。しかし、注意して使用しても副作用が強くでることがあり、個人的にはあまり使いたくないお薬です。砒素剤を使った場合、副作用をできるだけ起きにくくする方法でフィラリアを駆虫するのに最低でも6か月かかります。また、投与後は絶対安静にする必要があります。他にはフィラリアを外科的に摘出する方法もあります。

私としてはフィラリア感染の早期発見をして、イベルメクチンと抗生剤を使い、比較的副作用がでにくい方法で駆虫したいと考えています。



まなび野動物病院


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