餌が原因で起こる病気
はじめに
モルモットの腸内には肉眼では見えない生き物がたくさんいて、腸内細菌がモルモットのための栄養素やビタミンを作っており、モルモットはそれを利用しています。モルモットが食べたものはその細菌の餌でもあるため、モルモットが何を食べるかはモルモットの健康と深く関わりがあります。
そういう点で、モルモットにとって特に大切なものは餌の中に含まれる繊維質です。繊維質はモルモットの腸内細菌には必要で、さらに胃腸を刺激し動かす作用があります。繊維質の含有量が少なく、たんぱく質・脂肪・炭水化物の含有量が多い餌の場合、腸内細菌の異常が生じ、体にとっての善玉菌が少なくなり、悪玉菌が増えてきて問題がでてきます。従って、繊維質の多い牧乾草(チモシーなど)、野菜、などを与え、モルモットにとって正しい餌を選ぶことは病気の予防ということでは非常に大切です。
モルモット用フード(粒状餌、ペレット)には量に差があっても色んな種類の牧乾草が原料として入っていますから繊維質は入ってはいるのですが、モルモット用フードを与えていても、常に質の良い牧乾草が好きなだけ食べられるようにしておくことが胃や腸の病気を予防するためには大切です。ただし、硬すぎる乾草は口の中を傷つけることもあるようです。
与える牧乾草以外のペレットや野菜などの目安としては全体の10%が目安です。これは2015年にコロラド州立大学付属動物病院で研修したときにそのように指導していたため、当院ではそれからは10%とお伝えするようになりました。付属動物病院でのエキゾチック用の診察室内には写真付きでどの飼い主さんにも目立つように表示されていました。栄養障害、全身疾患を防ぎ、また、歯の健康のためには適切な牧乾草を与えることが大切です。 すなわち、90%の量の牧乾草を常に食べられるようにしたうえで、残りの10%は濃緑葉野菜、ペレット(制限する)、果物、他の野菜そしておやつです。
また、成長期の子供や妊娠・授乳しているモルモットは専用のペレットを与える必要があります。通常より多くの栄養を必要とするためです。但し、妊娠しているモルモットは太りすぎると難産になりやすく、他の病気にもなりやすいことがありますから、注意が必要です。
モルモットは餌の選り好みが強く、好き嫌いがあるため、モルモット用フード(粒状餌、ペレット)の種類を急に変えると食欲不振になり病気の引き金になるかもしれません。種類を変えるときは1週間くらいかけて徐々に行う必要があります。
特に若いときに主食の牧乾草はもちろん、成長期のモルモット用ペレット、他には野菜、果物、種類の異なるモルモット用フードなど色んなものを少しずつ与え味に慣れさせた方が良いと思われます。
歯の病気(不正咬合)
歯の健康の観点からも繊維質を多く含んだ餌を与えることは重要です。モルモットの歯は前歯も臼歯も一生伸び続けます。牧草や乾草などは繊維質が多く、カロリーが低いため多くの量を食べることが必要となります。そのために、伸びている歯が磨耗し上下の歯のバランスが取れているのです。高カロリーである穀類や、たんぱく質・脂肪の含有量が多すぎる専用フードを与えすぎると、牧草、乾燥、野菜を食べる量が減り、歯の磨耗も妨げられることになります。そうすると歯のかみ合わせが悪くなり、異常に伸びた歯が口の中の粘膜を傷つけ(不正咬合)餌が食べられない状態になることがあります。
もし、臼歯の不正咬合となってしまった場合は、口の周りはよだれが出て濡れており、物がよく食べられていないため、食欲がなくなります。また、前歯が異常に伸びてしまう不正咬合はモルモットの場合、金網などを噛んだことによる前歯の損傷が原因ではなく、多くは臼歯の不正咬合が原因で前歯の噛み合わせが悪くなり、発症するといわれています。できるだけ早く動物病院に連れて行く必要があります。
尿石症
アルファルファなどカルシウム含有量の高い牧草を与えると膀胱結石などの問題が起こることがあるため、チモシーの方がお勧めです。特に4歳以上の場合(雌の方がなりやすい傾向)膀胱結石になりやすく、予防にはカルシウム含有量を抑えるため、チモシーが主な原料のモルモット用フード(粒状餌、ペレット)及びチモシーの乾草が良いと思われます。
ビタミンC欠乏症
モルモットは自分の体内でビタミンCを作ることができないため、与えないと病気になってしまいます。モルモット用フード(粒状餌、ペレット)にも当然ビタミンCは添加されているのですが、多くは不足していると考えられます。ペレットの保存状態によっては劣化しており、表示されているビタミンCほど含まれていないため、一般的にはサプリメントが必要です。
1日に必要なビタミンCの量は体重1kgあたりで表示すると、成長したモルモットで15~25㎎、成長期・妊娠中の場合30㎎です。
ビタミンC欠乏症の症状としては元気がない、歩き方がおかしい、関節が腫れているなどです。心当たりがあればできるだけ早く動物病院に連れて行く必要があります。
毛球症
体毛が胃内に蓄積することで胃腸閉塞を起こす病気で,モルモットでもまれですが発症する可能性があります。予防には牧草や乾草など繊維質の多い餌を与え、常に充分な水が飲めることが大切です。繊維質は胃腸を刺激し動かすため胃内の体毛を排泄する働きがあります。
肥満・糖尿病
ニンジンや果物、穀類は与えすぎると肥満になり糖尿病のリスクがでてきます。
熱中症
モルモットは特に湿気・暑さに弱く夏は注意が必要です。推奨されている環境温度は18~26℃です。
足のケガ
ケージの床が細い金属性の網状となっている場合、足を挟んだりして怪我をすることがあります。また、ビタミンC欠乏症に付随して起きることもあります。
異常分娩
モルモットが初めて分娩を経験するときが7ヶ月齢以降の場合、産道が広がらないため異常分娩(難産)となる可能性が強いことを覚えておきましょう。即ち、子供を生ませるつもりであれば、7ヶ月以前に始めての分娩を経験させておく必要があります。そうすると、その後は産道が正常のまま維持されるため、産道が原因となる難産とはなりにくいことになります。また、肥満の状態でも難産となりやすい傾向がありますので適切な体重が維持できるよう注意しましょう。
食べさせてはいけないもの
中毒のページを参照してください。
参考文献
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