フード
フェレットは本来肉食動物ですので、まず、良質のフェレット専用フード(たんぱく質と脂肪は動物性のもの)を与えることが大切です。残念なことに、多くのフェレット専用フードでは穀類や植物由来の蛋白・脂肪も原料として使われています。したがって、動物性蛋白・脂肪の割合ができるだけ多いものを選んで与えることが大切です。動物由来のたんぱく質と脂肪がフェレットには適していると考えられており、過度の植物性由来の蛋白質・脂肪をあたえると、皮膚病、消化器系の病気や膀胱結石などのリスクが出てくる可能性があります。
植物由来の蛋白質が原料のフードを与えていると、ストラバイトと言う結石ができやすいと言われています。結石が膀胱にあると膀胱炎になったり、尿道に入ると、初めは、歩きながらオシッコをするなど、尿の切れがわるくなるようです。尿の色は正常でも、検査をすると血液の反応が出ることもあるので、尿の色だけから判断はできません。完全に尿道に結石が詰まると尿がでなくなり、緊急手術をすることになります。雄の方が尿道が狭いため、詰まりやすいです。もちろん、気付くのが遅れると死亡します。犬や猫の場合は結石ができないような予防のためのフードや、ストラバイト結石を溶かすお薬もあります。しかし、フェレットの場合は良質の動物蛋白質由来のフードを与えることしか予防の方法がないですし、治療は必要なら手術をすることになります。
フェレットの胃腸は野菜や甘いものなどを消化するようにはできていないため、炭水化物、や野菜を与えると消化器に負担がかかり、理論的にはインスリノーマ(膵臓の腫瘍)や糖尿病などのリスクが出てくることになります。
特にフェレットは甘いものが好きですが、体には良くないということになります。飼い主さんの中には、体には悪いとわかっていても、フェレットが喜んでたべるために、量が少しだから大丈夫といって、甘いおやつを与えていることがあると思います。この“少し“というところに盲点があって、よくあるのは私たち人の感覚で少しと思って与えていることです。与えるおやつを50倍以上で想像して、ご自身が食べることを想像してみると、それが、体の小さいフェレットが食べる感覚だということに驚かされると思います。また、ドライフルーツなどをそのまま与えると、良く噛まずに飲みこんで腸閉塞などの問題が起こる可能性があります。健康のためには、お肉や卵などをおやつとして与えた方が良いと思います。
脱毛・痒み
特に左右対称の脱毛の場合ホルモンに関連する重大な病気のことがあります。痒みをともなうこともあります。雌の場合生殖器(肛門の下)の外観が皮膚の脱毛に伴って変わることがありますので、日ごろから観察しておくと病気に早く気付くかもしれません。
特に雄のフェレットの場合脱毛の原因となっている病気のため尿閉(おしっこが出なくなる)が起こることがあるので早めの受診をお勧めいたします。
インフルエンザ
人のインフルエンザ・ウイルスはフェレットへ感染することができます。特に、子どもあるいは高齢のフェレットや、他の病気にかかって体力がないフェレットがインフルエンザに感染すると問題になりますので、このようなフェレットにはインフルエンザに感染している人は接触しない方が良いことになります。また、フェレットのインフルエンザが人に感染することもありますが、一般的には人のインフルエンザがフェレットに感染する方が多いといわれています。公衆衛生上、インフルエンザに感染したフェレットを扱うときは顔には近づけないとか、触った後はよく手を洗うなど、気をつける必要があります。
毛球症
体毛が胃内に蓄積し毛球症による胃腸閉塞を起こすことがあるため、予防剤を投与することも必要です。毛球症から胃腸閉塞を起こすと、元気がなくなり、直ぐに手術をしなければ命に関わります。
3日ごとにエンドウ豆大のワセリンを前足に塗ってあげるとそれを舐めることで、腸にたまった体毛を出やすくします。舐めない場合は動物病院で扱っているような猫の体毛を排泄させるためのもの(ラキサトーン)を使うと良いでしょう。
環境
フェレットいとって、高いところに登れるようなケージは、落ちると怪我をすることがあり、適当ではありません。ただし、ストレスを与えないために、十分な大きさのフェレット用ケージで飼いましょう(61×61×46cm/フェレット2頭)。床が金網の場合は網目が大きいと足を痛めるので注意が必要です(網目が6.3mm以下のものが良い)。
ストレスを与えないために、最低1日2時間はケージの外に出して遊ばせることが理想です。フェレットは穴を掘るのが好きな動物です。従って、フェレットは部屋の中ではソファーなど、やわらかい家具類は噛み砕いて穴を掘ろうとするかもしれません。そのとき異物として食べてしまうと大変なことになりますから、フェレットが遊んでも大丈夫な環境で遊ばせることが大切です。異物や私たちが使う日用品など、くわえて飲み込む可能性のあるものは遊ばせるときは除いておきましょう。
このことは私が2015年コロラド州立大学付属動物病院に研修に行くまで恥ずかしながら知らなかったことです。現実的かどうかは別問題として、知識として知っておくと病気を未然に防ぐことが可能かもしれません。もちろん実行すればの話ですが・・・。
フェレットは副腎の病気になることがあります。副腎が腫瘍化して病気になるのです。内科的、外科的治療方があります。この病気にならないようにする方法があるようです。
専門書にはアメリカのフェレット牧場で早期に避妊・去勢手術をする影響ではないかと読んだ記憶があります。しかしそうではなさそうです。コロラド州立大学付属動物病院のDr.Terry W. Campbell準教授にお聞きしたのです。研修中にお聞きしたこの話を自分のホームーページに載せても良いかとお聞きすると、‟良いよ”と言っていたのを思い出して書いておくことにしました。
イギリスではうさぎ狩りが行われています。その狩りにフェレットが使われています。うさぎさんには可哀想ですがそのようです。そのうさぎ狩りのフェレットには副腎の病気がないとのことです。そのフェレットの飼われている環境というのがペットのフェレットとは異なるのです。即ち外の小屋で飼われているわけです。したがって、自然光の環境で飼われています。
ペットとしてフェレットを飼う場合には、蛍光灯などを使わずに飼うことが現実的かどうかはわかりません。もし可能ならば、暗くなったら明かりをつけずに飼うことで、副腎の病気にならない可能性が十分あると思いました。
2歳以上のフェレットでは発症する可能性があります。原因ははっきりわかっていませんが、少なくとも遺伝的な要因があります。症状は呼吸が速くなったり、元気がなくなったり(特に運動後)します。心臓の病気は直ぐに命にかかわることがありますので、早めに動物病院に連れて行くことをお勧めします。
参考文献
Brown S. “Care of Ferrets”. SMALL MAMMAL HEALTH SERIES. September 2006. Veterinary Information Network. 1 June 2009. <http://www.vin.com/Members/SearchDB/vp/VPA00467.htm> (subscription required)
Ellis C. “Ferrets” SAUNDERS MANUAL of SMALL ANIMAL PRACTICE. 3rd ed. Eds. Birchard SJ and Sherding RG. St. Louis: Elsevier-Saunders, 2006.
Gorrel C. Veterinary Dentistry for the General Practitioner. St. Louis: Elsevier-Saunders, 2004.
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